病院やクリニック、歯科医院、介護事業所では、清掃や空調・給排水設備などの保守を外部の事業者に依頼する場面があります。その際、料金とともに確認しておきたいのが、任せる作業の範囲と進め方です。
「清掃一式」という言葉だけでは、床の清掃、窓の清掃、定期的な作業のどこまでを含むかが伝わりにくいことがあります。設備の「点検」についても、部品交換や修理まで料金に含まれるかは、あらかじめ確認したい点です。
本記事では、日常清掃や建物設備の保守を中心に、委託先と契約書・仕様書などで共有しておきたい項目を紹介します。施設や業務ごとの法令の適用を、個別に判断するものではありません。
1.任せる作業と、含めない作業を分ける
最初に、作業する場所や設備、実施する内容を具体的に整理します。清掃では対象区域と作業内容を、設備保守では対象設備と点検・交換・修理の範囲を分けて書くと、委託先と確認しやすくなります。
・対象となる部屋・区域・設備と、立ち入りを認める範囲
・日常的に行う作業と、定期的に行う作業
・委託料金に含む作業と、別途依頼する作業
・清掃用具・消耗品・交換部品を、どちらが用意するか
・施設側が行う準備や、委託対象に含めない作業
作業範囲の詳細は、契約書と合わせて仕様書や一覧表にまとめる方法もあります。どの書類を契約の一部として扱うか、契約書・見積書・仕様書の内容が食い違った場合にどう確認するかも、双方で整理しておきましょう。
2.作業日時と、施設内での進め方を共有する
医療・介護の現場では、診療や利用者さまの生活に配慮しながら作業を進めることが大切です。作業する時間帯だけでなく、日程を変更するときの連絡方法も決めておくと、運営側と委託先が調整しやすくなります。
・作業の曜日・時間帯・回数と、定期作業の日程
・休診日・休業日や、施設側の都合で作業できない場合の扱い
・騒音・振動や、設備の停止を伴う作業を行う前の連絡
・鍵や入退室カードの貸与、保管、返却の方法
・施設の衛生管理方針や区域ごとの注意事項を共有する方法
作業の変更依頼や質問は、施設側の担当者と委託先の責任者を窓口にして進められるよう、連絡先と連絡の流れを整理します。清掃・感染対策の具体的な作業方法は、施設の方針や専門職の確認を踏まえて共有してください。
3.料金と追加作業の条件を明確にする
月額や年額の料金が決まっていても、すべての作業がその料金に含まれるとは限りません。通常の作業と追加作業を分け、追加料金が生じる条件を確認しておきましょう。
・基本料金に含まれる作業・消耗品・部品などの範囲
・臨時の清掃、部品交換、修理、時間外の対応などの料金
・追加作業の見積りと、着手前に承認する担当者・方法
・請求の時期、支払期限、振込手数料や消費税の扱い
設備故障などで急いで対応する場合も、応急対応の範囲と、追加費用を確認する連絡先を決めておくと安心です。「料金に含まれると思っていた」という認識の違いを、作業前の確認で減らしていきます。
4.作業の報告と、問題が起きたときの連絡方法を決める
作業を実施したことだけでなく、どのような状態だったかを施設側が把握できるよう、報告の内容・頻度・提出先を整理します。
・作業日、担当者、実施した内容を記録する方法
・点検結果や、不具合・追加対応が必要な箇所の報告方法
・作業内容に不明点や不足がある場合の確認・改善の進め方
・事故や破損に気づいた場合の初期連絡先と連絡手段
・緊急時に連絡がつかない場合の連絡順序
事故や破損に備え、原因の確認方法、責任の分担、委託先の保険加入状況も確認しておきましょう。
緊急対応を契約に含める場合は、対応できる時間帯と内容も確認します。記録や報告に写真を使う場合は、患者さま・利用者さまの姿や、氏名などが写り込まないよう、撮影の範囲と取扱いを共有しておきましょう。
5.個人情報と秘密保持の約束を整理する
清掃や設備保守が主な作業であっても、施設内の書類、掲示物、画面などを通じて、患者さま・利用者さまの情報に触れる可能性があります。
個人情報保護委員会は、個人データを直接扱わない清掃業務などでも、施設内の個人情報に接する可能性への配慮を示しています。契約への記載は、業務内容や施設の管理状況に応じて検討する必要があります。個人情報保護委員会の医療・介護分野Q&A(Q3-6)
https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq3-qb3-6/
実際の作業を想定し、例えば次の事項を委託先と相談して整理します。
・業務に不要な書類や画面を見たり、撮影・複製したりしないこと
・知り得た患者さま・利用者さまの情報や施設の内部情報を、業務の目的以外に利用・口外しないこと
・作業に携わる人へ、施設の情報管理ルールを周知する方法
・書類の置き場所や画面の表示など、施設側で整える管理方法
・紛失・誤送信などに気づいた場合の連絡と、契約終了後の情報の取扱い
守秘義務の文言を入れることと、現場で情報を守ることをつなげるために、契約上の約束と日々の運用を一緒に確認することが大切です。
6.契約期間と終了時の引き継ぎを確認する
継続して依頼する業務では、契約期間だけでなく、更新や終了の手順も整理しておきましょう。
・契約の開始日・終了日と、更新の方法
・条件の見直しや解約を申し出る期限・方法
・中途終了時の料金や、未実施の作業の扱い
・鍵・入退室カード・貸与品・保管している情報の返却や処理
・作業記録、設備の状態、継続対応が必要な事項の引き継ぎ
委託先を変更する際にも、必要な記録や連絡事項を引き継げるようにしておくと、日常の運営をつなぎやすくなります。
7.再委託の可否は、業務ごとの基準に沿って確認する
委託先が別の事業者に作業を任せる「再委託」については、業務の種類や適用される基準を確認したうえで、契約条件を整理します。
医療法に基づく委託基準の対象となる施設の清掃では、厚生労働省の通知に、日常的な清掃業務を再委託しない取扱いが示されています。日常的な清掃以外の業務を再委託する場合にも、医療機関への事前説明と了解、直接受託した事業者の最終的な責任について記載されています。厚生労働省「病院、診療所等の業務委託について」の改正通知(第九)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9245&dataType=1&pageNo=1
適用される取扱いは、施設の種類や清掃する区域・業務を踏まえて確認してください。厚生労働省の委託業務の範囲等に関する通知
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc8933&dataType=1&pageNo=1
医療機器の保守点検や感染性廃棄物の取扱いなども、日常清掃や建物設備の保守とは切り分けて確認する事項です。必要な資格・許可、適用される委託基準が不明な場合は、業務に応じた専門職や担当行政窓口へ確認しましょう。
まずは、手元の書類と取引条件を整理する
契約書、見積書、仕様書、作業予定表、報告書の様式など、今ある書類を集めてみてください。そこに「任せること」「追加費用がかかること」「報告してほしいこと」が、双方に伝わる形で書かれているかを確認するところから始められます。
まもりすと行政書士事務所は、行政書士の業務範囲内で、契約書などの作成と、書類作成に関する内容確認の相談をお受けします。受任できるかどうかは、ご相談の内容を伺って確認します。紛争に関する交渉や訴訟対応などは取り扱いません。
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